About

松尾 昌樹 masaki matsuo

東京都出身

statement

具体的な自然を想起する一歩手前、言葉や形によって自然が切り分けられる以前の風景。私はそれを「名を持つ前の自然」と呼んでいます。直線を重ねる行為によって、自然を構成する秩序や相互関係を浮かび上がらせ、「名を持つ前の自然」を描くことができるのではないかと考えています。

東京で育った私が東北へ移り住んだとき、目にした自然の姿は想像をはるかに超えるものでした。様々な物質や現象が渾然一体となり、言葉ではとても表現しきれない圧倒的な体感を伴った景色。今思えば、その景色こそが「名を持つ前の自然」に通じるものであり、私の制作の出発点となりました。

私にとって、自然を描くことは、自然物をそのまま再現することではありません。取材をした場所の空気、音、匂いといった質感を画面にトレースするような感覚で描き進めていきます。その過程で、自然物そのものではない、シンプルな直線の集積から自然の在り様が浮かび上がる瞬間があります。そこに、自然を自然たらしめる本質が宿っているのではないかと感じます。

直線を何度も重ね合わせること。一つひとつの単純な線が交わり、密度と線同士の関係が生まれることで、個々では成し得ない複雑な構造が現れ、そこにリズムが立ち上がります。この直線が織りなすリズムを通して、自然を形作る秩序や相互関係を見出し、私は「名を持つ前の自然」を描こうと試みます。私にとって自然を描くことは自然らしさを探る行為であり、自分自身と自然とのつながりを見出し、確かめていく営みなのです。

略歴

2022 東北芸術工科大学芸術学部美術学科日本画専攻卒業

【展示歴】
2019 「KENZAN2019」(新宿パークタワー)

   「日本画五人展」(ギャラリー美の舎) 2020 「KENZAN2020」(オンライン)

   「みちのく現場考展」(東京九段耀画廊)
2023 「TEETRAGON~EXHIBITION」(福岡三越ギャラリーVI)

   「みちのく現場考展‐東北描キ巡リ、芸術想ヒ巡リ」(小津和紙ギャラリー) 「アマダレ2023」(群馬県 画廊翠巒)

2024 「青と緑は水切りを 正村公宏×松尾昌樹」 (UNPEL GALLERY)

賞歴


2021 東北芸術工科大学卒業制作展 優秀賞